JAIMAについて

EU-RoHS指令の概説

数ある製品含有化学物質規制の中から、分析機器ビジネスに最も大きなインパクトをもたらすEU-RoHS指令の概要を、ここでは紹介します。

EU-RoHS指令とは、制限物質が指定濃度を超えて対象電気電子機器に含有することを制限し、RoHS非適合製品のEU市場での販売を禁止するものです。分析機器も一部を除いて、規制対象のカテゴリー9「監視・制御機器」に該当します。

規制対象の電気電子機器の範囲 制限物質 指定濃度と基準
  • 適切に稼動するために、電流あるいは電磁場に依存する機器、また、
  • 電流と電磁場の発生、転送、計測用の機器で、
DC1,000VまたはAC1,500Vを超えない定格電圧で使用するように設計されているもの
Pb 1000 ppm
  • 基準(分母):
    均質材料(homogeneous material)

均質材料とは、機械的に分解できる最小レベル(ヤスリ等で分解できるレベルで、塗膜部分やメッキ部分などがこの場合の最小レベルとなる)を指します。

下図の例で言うと、半導体を機械的に分解できる各構成の最小レベルが均質材料となり、それを分母とした制限物質の含有濃度で、規制への適合性を判定しなければなりません。

製品含有化学物質規制の歴史
Hg 1000 ppm
Cd 100 ppm
Cr(VI) 1000 ppm
PBB 1000 ppm
PBDE 1000 ppm
DEHP 1000 ppm
DBP 1000 ppm
BBP 1000 ppm
DIBP 1000 ppm
【規制対象のカテゴリー】
カテゴリー9

EU-RoHS指令は2011年の改正により、EU-CEマーキング制度に組込まれ、EU整合法令の一つとなりました。CEマーキング制度は、EU市場での製品の自由流通を担保する制度で、電気電子機器メーカは、対象となる製品に対して、対象となるEU整合法令への適合性を確認した上で、CEマークを貼付しなければなりません。RoHS指令の適合性確認では、整合規格EN IEC 63000に従って、均質材料を基準として制限物質の含有が指定濃度以下であることを確認します。

【EN IEC 63000に基づく、適合性評価プロセス図】
製品含有化学物質規制の歴史

しかしながら、現在の技術では、制限物質を使わずに製品の特性を達成することが難しい用途が現実に存在しています。EU-RoHS指令では、こうした用途を「適用除外用途」(Exemption)に指定して、用途限定の上で制限物質の使用を認めています。適用除外用途は、現在の技術では実現不可能なため仕方なく認めているとの位置づけのため、用途ごとに有効期限が定められています。また、利害関係者から期限延長の申請をすることは可能ですが、やはり最新の科学技術の知見に基づき、代替が技術的に不可能か、代替による社会影響が大きいかといった観点から、延長の妥当性が評価されます。

【適用除外評価のプロセス図】
適用除外評価のプロセス

適用除外は、申請企業単位ではなく用途単位で認められるので、これまでは何も声を挙げなくとも必要な除外を適用できていたかもしれません。しかし、審査は年々厳しさを増しているため、自社製品に必須な用途に対しては、自社で声を挙げる必要があります。JAIMAは『医療・計測・分析・制御機器関連工業会連絡会(呼称:カテゴリ8&9連絡会)』を構成する1団体として、RoHSのカテゴリ8&9製品に関する代替状況や社会インフラ用途としての重要性を当局に意見するロビー活動を、日欧を中心とした他団体とも連携して実施しております。個社単独でのロビー活動は負担が大きいですが、団体でのロビー活動は負荷を分散しながらも技術情報の質を高められ、更に、当局に耳を傾けてもらえる可能性が比較的高いため、望んだ効果を得られる可能性が高まります。